秩父の廃村【T集落跡】
私は今Dir en GreyのVulgarというアルバムを聴きながらとある廃村の風景について思いを馳せている。(今のDirはオシャレな感じになっちゃったけど)
中学の頃このアルバムに収録されている「砂上の唄」や「drain away」の世界観に衝撃を受けて、いつかそんな世界を彷徨い歩いてみたい願望があった。
今回訪ねた廃村はまさにその舞台を彷彿とさせてくれる。
旅の起点は秩父さくら湖。浦山ダムの底にもいくつかの集落が眠っている。
日が昇る時刻に浦山に到着し、靄がかった町と明るくなり始めた空を何枚か撮影した。
あわよくば日の出を撮りたかったのだけど、角度的に難しいことは到着してから悟った…それでも色温度が高いこの時間帯は本当に好き。
浦山ダム周辺にはいくつもの廃集落が眠る。
ネット情報にダム建設による退去及び過疎化に端を発するとの噂があったが、無人化の経緯は定かではない。しかも隣接地区には住居が散在するので厳密に言えば超限界集落とのことだ。
訪問した時分にはまだ残雪があり、そのため半登山に近いT集落への道のりは少々過酷だった。
振り返れば澄み切った青い空。雪化粧で枯れた山肌がキレイに見える。
昇ること10分弱で一軒目が現れた。
ここの廃屋は、なんというかまあ。小綺麗に残っている感じ。
いい天気だな〜廃村日和だ。
気軽な散策で訪れる分にはおすすめな物件。(周囲にはキャンプ場があり管理されている様子も伺えます。十分ご注意を)
どうやら目的地のT集落はこのもっと奥のようだ。
からの、また少々登山。Googleマップ上の鳥居マークを目印に歩く。
カラフルな前掛けと頭巾。手入れが行き届いたお地蔵さま…ここにあったお地蔵さまが数体持ち去られたそうで。悲痛な思いが書かれた張り紙がありました。過疎地の人の信仰心は深く、決して生半可な気持ちで接してはいけない。
ついでに言うと廃墟散策は舐めて行くと痛い目みる。こういうブログを書いてる事自体かなりリスクをしょってるし、常にその自覚を忘れてはいけないなと。
覚悟のない人に我々のような人間は絶対に声をかけない。なぜかって有事に対応できないから。
おっと、また余談になった…😓
あれ?そろそろじゃね?携帯に目をやろうとしたとき
それは突如、ほんとうに突然に眼下に現れた。
一歩ずつ、恐る恐る、敬意を持って、畏怖の念を抱いて近づく。
ばーーーん!外形を保ってるのがやっと、という感じの崩壊ぶり。
それにしても大きな家だ。かつては立派な屋号があったに違いない。家財はほぼ撤去された状態だったけど、残留物は豊富。
住所?らしきものが書かれた筒が。下にもたくさん落ちてた。何に使うものなのかしら?
頼りない木質の梁や柱、枠だけになった障子が風を通す。かつてそこにあったはずの荒床や畳は腐り落ち根太は露出。雪の重みで押し潰された棟木は曲がり天井の地を成していた途端がズルリと垂れ下がっていた。
琥珀色の光をまとった雪はなんとも美しいが。
家の朽ちっぷりに対して蔵のほうはかなり頑丈。漆喰壁に木漏れ日が陰影のスケッチを描き、あたりはあたたかい光に包まれていた。
日陰にはもはや原型をとどめな自転車。ここまで来るのにかなり険しい山道だったんだけどな…。チャリとは。
炊事場には当時の道具がそのまま残されており暮らしぶりがうかがえる。
やはりかなりのお金持ちのよう。笑
だいたい水回りスペックに比例すると思うのよね、財力は。
当時どんな物語りがここで繰り広げられていたのか。どんな気持ちでここを去ったのか。記録のためとはいえ、これ以上足を踏み入れることはできない。
余韻を残しながら、その場を後にした。