時をとめた【東京湾要塞】
要塞の断片。
猿島は国内に点在する戦跡の1つで、明治初期から昭和にかけて建造された
日本最初の要塞。元国防の要、貴重な産業遺構です。
午前10時のフェリーで島に上陸。日曜の朝だがなかなかの人集り。。
ゆるい起伏の地形と長い時間が作り出した空間へ。
見学者用のスロープを歩かされ兵舎や弾薬庫の並ぶ切り通しに出ます。
弾薬庫の外壁。くすんだ色味の煉瓦に鮮やかな苔がびっしりつき、表面の湿度が想像できる。
土木オタクが唾を飲むフランドル積みの煉瓦のトンネル。
にわか知識ではありますが、、たしかに華麗な印象を受ける。
70年以上前のものでありながら完璧に近い保存状態。きれいに埋め込まれた目地やピシッとそろった面に当時の土木技術の粋が生きてます。
一枚のモザイク画を見てるようだ。
砲台跡には生い茂った樹木がしっかりと根をつけていて
設備あとは何もないせいで当時のすがたを想像するのは難しい。
ぽつりぽつりのこる鉄の爪。今は木漏れ日が差す。
それから細長い島の先端に出ると。そこは釣り場でした。
お船がたくさんみえる。海は青い。
砲台のような設備痕が。
すでに崩落してしまったものもあるようですが、島全体で6つほどの砲台跡があるのかな。
山側にもどって、例のロケ地。
この建物だけテイストが違って随分モダン。というかミニマム。
比較するとわかりやすい?
今のように人目が行き届いた管理体制になる以前のものかもしれないけれど、
彼方此方にひどい落書き?どうやったらこんな深く彫れるものか…
このような行為に及ぶ心理は理解しがたい
学術的に価値のある遺構には観光資源としての活路があるのではないかと、個人的にいつも考えているのだけど、猿島に行ってそれはこうなることなんだとおもった。
入り口に売店が並び、崩落危険箇所は舗装され、小綺麗な説明書きや人工的な色味でうめつくされる。草木が生い茂った道なき道を踏み分けてやっと出会えたときの、あの感動がここには無くなっていた。
常にカメラを持った団体客で溢れかえり、悪く言えば趣を欠く…。
廃墟や遺構には退廃という余生がある。激しい気候による侵食、動物たちの遊び場、植物は好き放題自由に枝葉をのばし安い「非日常」なんて言葉では語れない空間になる。
人の手が入ることで第二の人生?は奪われる。
一方、心無い破壊行為から遺構を守り美しい姿を保つ方法が他にない。
帰って2、3日の間はそんなことを考えていた。
また行こう。そのうち入島料とられるらしい。
情報:最近国の史跡に認定されたようです。